五感すべてで愉しむことで、英気を養う時間に
CANALIZE meets Miho Mizoguchi | 菓子屋ここのつ
――近隣に溶け込んでいながらも、静謐で美しい外観ですね。
「古い材木置き場を、茶寮のために厨房も含めて古道具とギャラリー「白日」を営む西坂晃一さんに改装してもらいました。」
――茶寮では、ゆっくりと感じ、味わうことをとても大切にされているんですよね。
「そうですね。私自身が1ヶ月に1回はしっとり、ゆっくりと1人で過ごせるような場所が欲しかったんです。五感を使って非日常を楽しめる場所をつくりたい、というのがこの茶寮をはじめた動機です。緊張と緩和が大切。次第にすーっと気を抜いてもらったところに私の気を入れる。そんな感じです。」
――溝口さんが和菓子に親しまれたのはいつ頃からなのでしょうか。
「幼少の頃からです。私の祖母は、餡を炊いて家でさっと菓子を作るような人でした。なるべく自分で作ったものを食べる。おいしいものは家で、自分でつくる。そんな昔ながらの在り方が、最近は見直されつつありますよね。餡とどんな素材の組み合わせが合うのかを考えたりすることは私にとって日常のことでしたので、自然と和菓子を作る仕事につきました。そこから独立して茶寮をはじめたのは、そういった日本を取り戻したいな、という気持ちもあってのことです」
――茶寮に足を運ばれる方は、甘い物好きな方が多いのでしょうか。
「私の菓子はお抹茶だけに合わせるわけではないので、基本的に甘すぎない、素材そのものの甘さを大事にしています。なので、本来は甘いものが苦手という方がいらっしゃることも多いんです。お出しする7皿~8皿を美味しく食べ続けられるよう、甘いものと、ごまめのような甘じょっぱいものを、交互にお出しするようにもしています。月ごとに変わる最中の中身が、黒豆、アンチョビ、バターという日もあって、これは菓子でなく料理だという方もいらっしゃいますね」
――バターやアンチョビの登場にはかなり意表を突かれますね。
「洋菓子のイメージが強いバターですが、実は和菓子とも相性が良いんです。これは、茶寮でお持ち帰り用に購入できる“げんこつ”という菓子。日本に昔からある果実と種子9種類を茶・砂糖・塩で作った自家製蜜でまとめあげています。この菓子も、バターを添えて塩気と油分が合わさるとさらに美味しさが増します。多くの方に食べてもらいたい菓子です。」
――素材を選ぶにあたってのこだわりなどを教えてください。
「九州、北海道、関西と、全国から取り寄せたり、出張の際に購入したり、菓子づくりに試して納得できた素材だけを使っています。これは夏場も軽く食べられる“氷室豆腐”というお菓子で、素材は京都の豆腐と長野産の寒天。大豆の香りや甘みが強く、ほかとは一線を画すこの豆腐に出会えたことで、形にできました。茶寮をはじめて2年が過ぎ、信頼できる農家さんとの繋がりも増えて、より良い情報が集まるようになりました」
菓子屋ここのつ/溝口実穂
2014年11月より、浅草・鳥越にて茶寮『菓子屋ここのつ』をはじめる。定員5名、完全予約制の2時間の茶寮では、甘いものやしょっぱいものを織り交ぜた7皿〜8皿の菓子と、それに合わせた6種類前後の茶を提供。茶寮では、「ここのつ20選」と題し、溝口さんがセレクトした茶器や花器・器などの古物や現代作家に作ってもらっているオリジナルの器などを購入することもできる。
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