東京人の生活に寄り添う、今も昔も変わらない場所
CANALIZE meets Uichi Yamamoto|BOWERY KITCHEN
“お客さんに喜んでもらえるのが嬉しい”という、ごく当たり前の感覚
――似て非なるお店がたくさんできてきた中で、宇一さんの理想としてどういうお店が根底にあるんですか?
「飲食は、つくったモノに対してお金を払うっていう古典的な商売ですから。洋服をつくってお金をもらうのと一緒ですよね。なので、商売としては古典的なんですけど、モノだけでない何にお金を払うかってことなんです。僕たちは何をやって人に来てもらうのか」
――モノではないコトにお金を払うという考え方ですよね。具体的にはどのようなことなのでしょうか?
「たとえば、お客さんが来たとき、いらっしゃいませと言うのか、手を上げるだけで挨拶が済むのか、どっちが自然なのか、とかね。たとえば、お正月みたいな日にお店を使いたいだろうなって思うから自分たちは準備してる。それが自然だと思います」
――お客さん目線に立って考えているということですか?
「お客さんでもあるし、自分たちでもあります。お正月に開いててよかったって思ってきてくれたら、僕たちも嬉しいので」
――宇一さん自体はどういうお店に行きたいと思うんですか?
「最近できた新しいお店にはなかなか行けないんですよ。こういう風に思ってもらいたくてこうなってるんだろうなって考えちゃうから。昔からあるお蕎麦屋さんとか中華屋さんとか食堂って、なんでそうなってるのかわからないんです。なんでこんなに安いんだろうとか、ここのご主人はなんでこんな張り紙貼ってるんだろうとか……もう宇宙っていうか(笑)。このわからなさがなぜかしっくりくるんです。でも、今はそういう楽しいお店になかなか出会えないですよね。お店自体が急速にできあがることもあって、そこにブレがないというか、余韻がないというか」
――正しいだけで面白さはないですね。
「そこにね、エモーショナルな感情がないんですよ。景色いいなあとかお金掛かってそうだなあとか、綺麗だなあとか。新しいお店に行くと今でも羨ましいって思いますけど、でも、それ以上の情緒がないんです。そこでは美味しいお肉と新鮮な野菜を食べられるのかもしれないけど、自分が求めてるものはそれだけじゃないのかなって。お店の人が何を言ってどんな行動をとるのかとか、そういうことにも期待しますよね」
――ご自分のお店のスタッフの方にはどんなことを伝えているんですか?
「普通のことを言うなって伝えています。頼まれたものを出しているんだから『失礼します』はおかしいだろうとかね。うちは、個性でやれって言ってるんです。正しいサービスというより、面白いサービスというか。この前、バナナジュースを出しながら『太りますよ』って言ったスタッフがいて(笑)。お客さんが面白がってくれるならいいけど、それは焦りましたね」
――でもきっと、それが長年通いたくなる心地よさに繋がっているんですね。
「自分たちとお客さんのお互いの気持ちに接点があるんです。だから、たとえば商業施設にある誰がつくったのかわからないようなお店だと、人が介在してないと思うんですよね。すぐにクレームになるのは、早い遅いとか、高い安いの問題になってくるからで。仕方ないね、に甘えるつもりはないですけど、何かあったとしても、良くも悪くもお客さんが宇一さんらしいって言ってくれるんです」
山本宇一
1963年生まれ。heads代表。都市計画、地域開発などのプランニングに携わった後、三宿のwebを皮切りに飲食業に転身。東京のカフェブームのきっかけとなる駒沢のバワリー・キッチンや表参道のロータスをはじめ、原宿のモントークや白金のアーヴィングプレイス、丸の内ハウスなど、大小数々の空間プロデュースを手がける。駒沢のプリティシングスはポップアップストアなども行い、東京の隠れ家的存在として新たな魅力を放つ。
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