東京人の生活に寄り添う、今も昔も変わらない場所
CANALIZE meets Uichi Yamamoto|BOWERY KITCHEN
大衆文化から大衆コマーシャルへ。東京がもっていた本来の価値観とは
――東京オリンピックを控えていることもあって、東京はどんどん正しくなっていくような気がしています。
「東京の人は冷たい、とかよく言われてたけど、むしろ本来の江戸っ子はきっぷがよくて情に厚いんですよ。僕は東京育ちなので、そういう東京に対する自分の理想みたいなものがありますし、そういう気質みたいなものが自分の店にはないとダメだと思っています。ただ、もしかしたら東京はもうダメかもしれません」
――なぜ東京がダメだと思うのでしょう?
「僕は今53歳で、バブルが終わって仕事がない状態からキャリアが始まった時代だから、お金がない中でいろいろ工夫したんですよ。でも、今の30代~40代が、それをスキームとして真似したから何も生まれてこなかったんです。大人を信じるなと言われて育ったので、自分の上がやっていることの逆をやることが普通だったんですけど、今の30代~40代は、上の世代のフォロワーになってくっついてきちゃったから」
――新しいことが生まれているように見えて、実はバリエーションが広がっただけだったということですね。
「そんなこと関係ないよっていう10~20代の子が何かするかもしれませんけどね。今は情報がいっぱいあって、最大公約数の情報を一生懸命探している状態だから、その子たちの世代には可能性はあるけど、できるかどうかはわからないな」
――海外も考えているんでしょうか?
「今東京でお店をやっている人たちのステータスって、商業施設のいい場所に出店するっていうことだから、そういう競争とかステージにいるのは意味ないかなとは思ってます。だったら、どんな場所に作ってもお店がよければ行くし、お店がよくなければはっきり言うっていうアメリカ人の反応に触れるほうが、自分としてはやりがいがあるかなとは思いますね」
――東京のいいところが失われていっているということですね。
「東京でお店をつくると、雑誌の取材は来てくれて記事にしてくれるけど、そうするとメディアに出ているお店がいいっていう反応になるんですよ。でも僕は、昔から来てくれてる人がいいねって言ってくれるほうがいい。昔は大衆文化があったけど、いつのまにか売れるものがいいっていう価値観の街になって、大衆コマーシャルになっちゃったから、もう面白くはないですよね。別にいじけているわけでもないし、自分たちは売上を上げているとは思うけど、そこじゃないかなと思って」
――その点において、現状はどの文化も同じような状態に入っているように感じます。
「たとえば音楽でいうと、90年代あたりはひとつのタイトルが爆発的に売れて、みんなが同じ音楽を聴くようになっちゃったんです。それでその世代は、音楽を聴く力がなくなってしまったんですよ。自分が本当に好きな音楽は何かを探ってたどり着くっていう時代から、みんなが同じような曲を聴いて、みんなが好きそうな音楽をつくる時代になって……きっとファッションにも飲食にも同じことが起きてるんだろうと思います。本当にいいもの、好きなものを見極める判断能力がなくなってきているように感じますね」
――情報が飽和している今、10代~20代はまた探す必要が出てきたわけで、可能性があるというのはそういうことですよね。
「つねに呼び戻しが来るんですよ。今は呼び戻しの逆に突き進んでるから、どこかでみんな疲れるんじゃないかな」
山本宇一
1963年生まれ。heads代表。都市計画、地域開発などのプランニングに携わった後、三宿のwebを皮切りに飲食業に転身。東京のカフェブームのきっかけとなる駒沢のバワリー・キッチンや表参道のロータスをはじめ、原宿のモントークや白金のアーヴィングプレイス、丸の内ハウスなど、大小数々の空間プロデュースを手がける。駒沢のプリティシングスはポップアップストアなども行い、東京の隠れ家的存在として新たな魅力を放つ。
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