好きなものを追求することで自分をアップデートする
CANALIZE meets TOMITA LAB

2017.06.15

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――長年、音楽業界の第一線でご活躍されている冨田さんですが、ネットの浸透にともなう音楽のあり方の変容をどうとらえていますか?

「一番大きな影響を受けたのは、音楽そのものというより録音された音楽のあり方だと思います。多くの人が言っているように、ライブは逆に活性化されたという側面がありますよね。僕らは録音された曲をCDやレコードで聴くことを楽しんでいたわけだけど、それが形のあるメディアではなくなって……大々的になったのは2000年代以降かな。日本だけはまだCDで踏ん張っているけど、世界的に見るともう難しくなってきています。外国のミュージシャンが来日してタワーレコードに行くと、人類がまだCDを買っているって驚くらしいですよ」

――世界的にはそんなところまできているんですね。冨田さんご自身は今もCDを買っていますか?

「僕は買いますけど、買ってもすぐにパソコンに取り込むので、CDプレーヤーで聴くことはないですね。リスナーとしてのキャリアがあって、いろいろなメディアを経験してきた人間でさえ、そういう聴き方をしてしまうわけです。お金を払って音楽データを買うことに、僕らはもちろん抵抗はありません。だけど若い世代になると、音楽データにお金を払うこと自体に躊躇するというか。『え、お金払うの?』っていう価値観の人がどんどん増えていると思います」

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――この流れは止まらないんでしょうか?

「今は、僕らの世代から10代までグラデーション的にさまざまな価値観があるけど、結局は若い世代がどんどん上になっていくわけで。行く先々、音楽データに対価を支払うことに対して、多くの人がどう思うかは想像がつきますよね。それで、録音物ではなくライブだと昨今の音楽シーンで言われているんです。体験は複製できないから対価は当然、という考えは根強いですからね。僕もライブは好きなんだけど、音楽を録音する、録音した音楽を聴く。そして感銘を受けたり、いろいろな情報を感じ取ったりする――その文化形態というか芸術形態はとても尊いと思っていて、その喜びをなくしてしまうのは嫌なんです。だから、録音された音楽にとっては、若干危機的状況だといっていいと思うんだけど、どうすればいいかという以前に、“そんな状況だけどなくしたくない”っていう気持ちですよね」

――一方で、簡単に音楽を作れる時代にもなってきました。

「機材、特にコンピューターの発達のおかげですが、僕はとてもよいことだと思っています。昔は商業スタジオで長時間、高いお金を掛けなければできなかったことが、誰もが自宅で時間を気にせずできるようになった。音楽を緻密に録音していくのはすごく時間が掛かることですからね。そして音楽的な訓練や教育を受けていなくとも、アイディア次第では面白い音楽を生み出せるようにもなりました。この状況は音楽作りの間口を飛躍的に広げました。録音した音楽に対価を支払う人が減ったという状 況はテクノロジーの発展に大きく関係していますが、でも、そのテクノロジーが音楽自体の可能性を広げているのも間違いない事実なんです。だから現状をそれほど悲観的にはとらえていませんね。音楽的な観点からだけいえば、大変興味深い時代だと感じています。あとスピード感というのは時代によって変わりますしね」

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Photo_MURAKEN
Text_Aya Fujiwara

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