好きなものを追求することで自分をアップデートする
CANALIZE meets TOMITA LAB
――その変化の中、ご自身の楽曲や制作への変化もあったのでしょうか?
「間接的かもしれませんが、それはありますね。僕の基本的なアプローチは70年代とか80年代のシミュレーショニズム(過去のサウンドを楽器やスタイルを踏まえつつ、独自の解釈で現代に取り込むこと)で、それが楽しくて始めたんですけど、だんだん意地になってそれしかやらなくなってきちゃったんですよ。それはそれで楽しかったんですけど、やっぱり音楽家なので、たとえばリアルタイムでどんどんいいドラマーが出てくると、面白いからそれこそYouTubeとかをずっと見てるわけです。特にドラミングに関しては、この10年くらいで自分の感覚が更新されている気がしますね」
――技術的な部分でということでしょうか?
「技術的にもそうですし、音楽的にといってもいいですよね。たとえば、ドラムが機械音の曲がすごく増えてるじゃないですか。ヒットチャートの半分以上がそうなってますよね。そういう音楽がデフォルトになっている今、ドラムで何をするかをドラマーは考えるんですよ。それで最近、機械のドラミングも意識するドラマーが増えたんです。人間のプレイに比べて機械のドラムは不自然な部分も多いんだけど、それを今度は人間が演奏に取り入れる、というふうにね。そんな彼らのプレイを見ていたら、自分の興味の対象が変わってきて、ヒップホップやテクノのようなリアルタイムの音楽も自分がやる範疇に感じるようになってきました。シミュレーショニズムはすでに結構やってきたので、そこを取っ払ってやろうって考え始めたんです」
――昨年リリースのアルバム『SUPERFINE』では、若手の方の起用が目立ったのですが、そういう思惑もあったのでしょうか?
「そこは非常に関係がありますね。『SUPERFINE』の前から、既にほかの仕事でもシミュレーショニズムではつくれないような作品をつくり始めていたんですけど、冨田ラボでアルバムを出すってなったとき、若い世代に歌ってもらうことで、自分のサウンドがリニューアルしたことが、リスナーにより伝わりやすくなるんじゃないかと思ったんです。それに、若いバンドの話を聞いてみると、10年くらい前とは違って結構シンパシーを感じるバンドが増えてるんですよ。ネットをはじめ、音楽を取り巻く環境が変わってきて、その影響を受けた音楽家が20代前半から出始めたのかなって思ってますけどね」
――イベント『TOKYO LAB 2017S/S~beyond JAZZ, beyond NEXT !!』では、ジャズの新たな形が見られると聞いています。開催が間近に迫っていますが、一番の見どころはどこでしょう?
「個々の方がスタープレイヤーと言っていい人たちですから、彼らのソロプレイも十分楽しめると思います。それと、ツインドラムですね。実はここに苦労してるんですが(笑)。僕が呼ばれている理由として、ただのジャムセッションにしないようにっていう判断があったと思うんですよね。冨田ラボで2月にライブをやったとき、オープニングでインストをやって――その曲はエレクトロな要素多めから始まって、生演奏がミックスされていくって感じだったんですけど、それの評判がよくて。コンセプト的にはそういう感じにしようと思っています」
Profile
冨田ラボ
音楽プロデューサー、冨田恵一氏のソロプロジェクト。“アーティストありき”で楽曲制作を行うプロデュース活動に対し、“楽曲ありき”でその楽曲イメージに合うヴォーカリストをフィーチャリングしていくことを前提として立ち上げたプロジェクト。松任谷由実、高橋幸宏をはじめ、数々の名だたるアーティストが参加している。昨年発売のアルバム『SUPERFINE』では、水曜日のカンパネラのコムアイやSuchmosのYONCE、ceroの髙城晶平など若手アーティストを起用し、新境地を切り開いたことでも話題となった。
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