ものんくる~角田隆太と吉田沙良が想像するRELOADING WORLD
CANALIZE meets MONONKUL

2018.09.25

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角田「中三から高校にかけて、バンドを組もうと思ったら、案の定みんなギター希望。なので『選択の欠如による選択』として、ベースに。」「今の音楽シーンを先読みしたのでは?」という他愛のないフリをしてみたら、彼の音楽に通底する、ユニークなベーシスト観が見えてきた(ちなみに吉田的には「残り物に福」とのこと)。

角田「ベースの練習すべき量って、ギターやボーカルに比べて少ない可能性があるんですよ。(その当時の)素人の考えとして。」「その分他に時間が割ける、音楽の他の事をしていられる、ということかもしれない」

 

明治大学の文学部で心理社会学を専攻し、その一方でいわゆるごく普通のジャズ研で活動していた彼の音楽(性)に際立ったユニークネスを与えたきっかけが、小曽根真と井上ひさしの舞台であったことは前述した通りだが、ここで「自分で歌詞を書こう」と強く意識したことが大きい。さらには、最も愛読した作家として「坂口安吾*6」を挙げたことが、意外でもあり、妙に納得したことでもあった。

 

角田「音楽って自作自演のイメージが強く、映画や文学、ドラマ・舞台のように、例えば男性が女性の言葉を使って刺激的な表現をする機会が少ない」と語る。

小説の魅力はストーリー展開だけでなく、作家の言語感覚(文体)や人物像に惹かれることが多く、特に坂口安吾の描く女性像がとても好きだという、角田の言語感覚は極めて独特で、そんな彼の歌詞にボーカルである吉田は、

吉田「私には絶対に描けない世界観」「私は本もあまり読まず、脳内イメージを言語化するのがあまり得意じゃないので、『わー、全部言ってくれた』みたいな感覚がすごく強い」と、角田の日本語の歌詞について、圧倒的な信頼を寄せている。パートナーの書く歌詞とはいえ、それを歌唱で観客やリスナーに伝えるのは吉田の役割。そんな彼女の表現(クリエイティブ)の源とは、と尋ねてみたら、回答にとまどう様子(なかなか言語化できない彼女をみて、角田が助け舟を出した。

角田「彼女の場合『家族』(の存在)、そのために歌っているかもしれない。こんな世界観もあるんだと思うくらい絆の強いファミリー」とのこと。

 

例えば海外のアーティストがアルバムを発表すると、必ず最後に「SPACIAL THANKS TO・・・」といって、両親、妻、子供に対する愛情と感謝の意を臆面もなく表明する。そんな「家族」を何よりも大切にしている彼女のステージでの印象は、「誰に対して、どこを向いて歌ってるんだろう?」…ライヴハウスでも、大きな会場でも、常に観客を巻き込む(煽る)コミュニケーションがとても巧い印象だが、どこか「心ここにあらず」的な、ずっと先を見つめているような表情が強く印象に残る。

これについて、彼女は

吉田「来てくれた人達がどんな表情をしているか分からない。ただフィーリングというか、熱気だけを感じるだけ。『会場』とか、人が作った目に見える『壁』を超えたいと思って歌っているという意味では、確かに会場にいないかもしれない。笑」

やはり彼女は本物の「自由人」かもしれない。

 

ここで、あらためてを時間を巻き戻し、記憶を遡りながら「ものんくる」の音楽の未来について、語ってもらった。

これまでのアーティストと違って、創作活動の方法や、作品の発表のフォーマットやリリースのサイクルが大きく変わる環境にあって、その溢れる創作意欲を抑えることなく、活動する2人。

角田「作っていると、できないことも浮き彫りになってくるじゃないですか。作れていること(満足感)とは反対に、フラストレーションがどんどんたまるんですね」「妥協することは悪いことでは無いけど、やっぱり常に終わった瞬間にこうしたかった、という気持ちになる。

ここで、あらためて根本的な質問をぶつけてみた。

「自分達が、最初に職業は『音楽家』って言えると思ったのはいつですか?初めてギャラをもらえた時?それともCDを出してデビューした時?」それまで、あまり多くを語らなかった吉田が、先に口を開いた。

吉田「(聴いてくれて)良かったって言ってくれるお客さんがいて、ようやくなんかやっていけるって思ったような…」

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角田が続ける。

角田「2枚目のアルバム『南へ』へのリリースパーティーで、それまでハイハイ歩きだったものんくるが、急に立って歩きだした」とステージの上から客席を見渡して、そんな感覚に見舞われたというのだ。観衆の前で堂々としている自分たちを見る、これも角田特有の鳥の視点かもしれない。ここで吉田が、急に自分のターニングポイント、そしてキーパーソンを語りだした。

吉田「今に続く事の始まりは、大学の先輩の小西遼*7だったのかな。彼のバンドやライヴの時には必ず呼んでくれて。学生だったけど、ちゃんとギャラももらってやっていたし、その頃からプロでやっているつもりはありました。」「その頃は、思い切りジャズをやっていたけれど、(中学校の合唱部の影響もあってか)最近では、声を重ねていくこと、ハーモニーを作り上げていくことに興味を持ち始めてきた」「でもコーラスグループ等の編成(表現)には興味が無かった」吉田沙良という、ソロボーカリストとしての強い自我(≒プロ意識)がすでに目覚めていたのだと思われる。

 

ここで、角田がアーティスト(音楽家)としての、極私的な創作活動との向き合い方を語り始めた。

角田「できるだけ、どんどん垣根を取っ払いたいと思っています。自分の作品を『書記』している時も、自分のフィルターが、そこにある物語を邪魔してしまうと感じてしまうことがあって、本質を書ききれてないと思うことがあるんですよ。」

そのフィルターこそが、角田の「個性であり、キャラクター」ではとの問いには、

角田「それが自分の中に潜む、固定観念やコンプレックスのような気がして、なおさらそういう垣根を無くした作品を作りたいって思います」「今や音楽もサブスク全盛*8になってきて、もはや(音楽の)ジャンルが意味をなさなくなってきていると思う。僕が作りたい音楽は、ジャズで括られても、ポップスで括られても、どちらもマイナスになるのではないかと。そんなコンプレックスのひだみたいなものから解放されて、何ともとらえようがない音楽を作れたらと思います。」そして、彼は強調した。「この時、強く残っているものは『日本語』であり、『歌』だと思う。」_「ものんくる」の音楽の根幹である。

さらに続けて、

角田「活動の中で、ただ音楽を作っていくというよりは、映画と一緒になったり、異業種とのコラボレーションだったり、既存の音楽のフォーマットを破るような新しい形を作りたい」とも。

 

日本語の楽曲が世界で通用する(ヒットする)のは、何よりも「言葉の壁」がたちはだかり、なかなか容易ではない。そんな状況を十分わきまえつつも、「ものんくる」としてニューヨークをはじめ海外に発信していきたいという強い希望を持つ彼らに、あえてこの問題をぶつけてみたところ、

角田「(日本語で歌う事に)少なくとも障壁とは全然思ってなくて。日本語の『響き』でいけたらと思います」「英語に比べて、日本語をメロディ(とリズム)に載せることは難しいけど、それは例えば松本隆さん*9他素晴らしい作詞家の方たちが、すでに乗り越えているんだと思う。自分たちがそこから何ができるのか、だと思うんですよ」_吉田が付け加える。

吉田「日本人が海外の音楽を聴いて、言葉はよく分からないけど、音楽(メロディやアレンジ)はカッコいいから、それで(J-POP,ROCK等の)音楽はどんどん発展して行くけど、言葉(日本語)がついて行ってない状況があるんじゃないかと。だから日本語をかっこよく書いて、音楽が補うみたいな関係が良いのではと思う。自分の思いや考えが、言葉になった瞬間に半分になってしまう、それを補ってくれるのが音楽だと思うんです。自分の言いたいこと、気持ちとかけ離れてしまった半分を立体化してくれる要素が音やメロディだと。これを大事にしたいって思います。」吉田独特の言い回しだが、言い得て妙である。

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Photo_MOTOYA SAHARA
Interview & Text_HIROTSUGU SHIBATA(LDL)

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