食を通して、広がる人のつながり

 

—週末はいかがですか？

 

塩山：週末はたいていファーマーズマーケットに行くのですが、剛さんは漁師さんや農家さん達に人気者で、初めて一緒に行った時は驚きました！みんな「タケシ！、タケシ！」と（笑）。日本の野菜を育てている農家さんからかぶを買い、ぬか漬けにしてまた持って行き食べさせたりするんですよ！（笑）そりゃあ人気もでますね。

【NYのファーマーズマーケットでの塩山さん】

 

宮川:マーケットには生産者の方々の新鮮な食材が集まり、それを目当てに一流シェフなど、遠方からも多くの人が足を運びます。そんな素晴らしい食材を思う存分楽しんで料理してもらう為にスタジオにキッチンを作りました。

塩山：以前は火も水道も無い屋台のような台所でしたからね！（笑）

宮川:舞さんの料理を求めて、色んな人が集まるようになりましたね。

塩山：そんな日々を送っていたら、8月、たまたま剛さんの展示会で私の料理を食べて頂いた方から、ユニオンスクエアのグリーンハウスという、ファーマーズマーケットの会社の建物で料理を作って欲しいという依頼をいただきました。ところが、夢のような気分で打ち合わせを終えたタイミングで、自分が妊娠していることがわかりました。

宮川：開催が10月で、体調を考え舞さんは、一度は断ろうとしたようなんですが、相談を受けた時に僕は「大丈夫だよ。やれるよ。」と後押しして。

塩山：大好きなファーマーズマーケットの場所での料理ということと、剛さんの協力も貰えたこともあり、車輪のついた椅子に座りながら調理したり（笑）。アシスタントのみんなやタケシさんがいたからなんとかイベントを無事成功させる事が出来ました。

【ファーマーズマーケットに知り合いも多い宮川さん】

 

そして、3人での新たな生活へ

 

—お子さんの存在で、ライフスタイルも変化されましたか？

 

宮川：翌年の4月には息子、空（そら）、が生まれました。舞さんは週に3回くらいは工房に息子を連れてきてくれて。夕方になると舞さんの友達立ちが自然と工房に集まるようになってきました。

【息子の空くん】

 

塩山：工房に集まる友人達とも、自然に食を通じた集まりが生まれ、赤ちゃんの乳歯が生えはじめる生後100日ごろ、その成長を祝う「お食い初め（おくいぞめ）」という日本の儀式を、他の子も一緒にみんなでシェアしたり。いつかここNYで「日本の食ベースの離乳食の本を出したい」そんな新たな夢もできました。

 

宮川：舞さんの存在が、僕の周りのアーティストや、そのファミリーにも少しずつ影響を与えているのが、横から見ていて楽しいですね。舞さんの食事で、また新たな人の輪が広がっているように思います。

【NYでの熊本震災後の応援イベント「I ♡ Kumamoto」】

 

塩山：印象的だったのが生まれも育ちもNYのチャキチャキのニューヨーカーが「剛はベスト・ニューヨーカーだ！おまえはとてもラッキーだ！」と日本人のタケシさんの事を言うんです。アメリカに30年も住むタケシさんですが、彼はとても日本的で、そんな日本人的な彼をニューヨーカーはリスペクトしているんだと、今でも感じています。

 

—3人のニューヨークの生活はとても楽しそうですね？

 

塩山：NYの生活は楽しくもあれば、不便だったり、大変だったりもします。でもここにいたい理由は、人と人が助け合ったり、なんでも皆でシェアしたり、人事とは考えず、人に無関心でないこと。けれど、皆がそれぞれ自由でいて、相手を個性を尊重して生きている。息子にも、そんな周りにも、地球にも優しい生き方を肌で感じて、伸び伸びと育ってほしいと思ってます。

宮川：僕は5歳の時に父から飛行機の模型作りを教えて貰って、そこから何か大切なことを学んだ気がしています。空が5歳になったら、彼や、彼の学校の仲間に、ものづくりを教えるような会を開けたらいいなと思っています。まあ、最終的には自分の好きな事をして貰いたいですけどね。