—自社で発売された『民芸スタジアム』、『アンガーマネジメントゲーム』、『職業診断ゲーム わくわくワーク』等には、教育的、知育的な要素も感じるのですが？

『民芸スタジアム』に関しては、まず僕が『遊戯王』のようなキャラを対決させるカードゲームが大好きだったことが原点に有ります。当時、乙幡啓子さんというクリエイターの方とゲームを作りたいと思っていたところ、乙幡さんが興味を持っていたのが全国各地の民芸で、「各県の個性的な民芸のキャラクターを対戦ゲームにしたら面白いのでは！」という発想から生まれました。

全国に点在する民芸の作り手の方をひとつひとつ交渉して、47都道府県の許可を得るのに半年、それからゲーム設計、製造に半年で、1年に渡る長いプロジェクトになりました。ユーザーから、カードゲームとしての好評価もいただいているのですが、民芸図鑑としての側面にも注目していただけることにもなり。

『職業診断ゲーム わくわくワーク』は、ただただゲームの中で欲しいもの、やりたい経験にお金を使って、点取り合戦をしていると、自然と自分に向いている職業にたどり着くという構造になっています。

『アンガーマネジメントゲーム』は、「コンビニのレジで割り込まれた」、というような怒りが生まれる事象について、まず、ある人が怒りを数値化して、1から10までの中からその数を選びます。それを他のプレーヤーが予想して当てる、という形でゲームが進んでいく中で、参加者同士の相互理解が深まったり、自分が怒りを感じる事象についていろいろな捉え方ができるようになったりするように設計されています。

【様々な会社とのコラボレーションなどで開発された『グーチョキパーダラピン』、『民芸スタジアム』（後列）、『職業診断ゲーム わくわくワーク』『THE仮想通貨』『アンガーマネジメントゲーム』（前列）】

確かに学習的な要素は含まれているのですが、共通しているのは、「学び」よりも「楽しさ」、「ゲーム性」を優先していることでしょうか。「学び」が先に来るゲームは、押しつけがましかったり、つまらない事が多いですね。理想は、「楽しみ」、「遊び」の中から、「興味」や「気づき」が生まれ、それぞれが知らず知らずのうちに、「学んでいる」という形だと思っています。

—「株式会社ウサギ」の今後が楽しみですね。

小中高とクラスの人気者が、何気なく日常的に巻き起す「笑い」が、自分にとってはとても難しいことに思え、嫉妬を覚えたり、憧れるようなものでした。落語を通じて手に入れた、自分の弱さを元に「笑い」を起こす力が、今の自分の人生や仕事の核になっていることを思うと、人は得意なことではなく、苦手なこと、そしてその苦手なことを克服する過程に、人生を切り開くヒントがあるように感じることがあります。

おもちゃ開発が、今の「おもちゃクリエイター」を名乗る自分のメインの仕事なのですが、おもちゃは生活の中で、絶対的に必要ものでは無いですよね。ただ、「笑い」は人が生きてゆく上で、幸福に過ごしていくために絶対に必要不可欠なものだと考えています。

自分が作ったゲームや商品を通して「笑い」を増やすこと、自分の弱さが触媒、凸凹の凹になり、クライアントの課題が明確になり、プロジェクトが活性化すること、そんなことにひとつひとつ丁寧に取り組んでいきたいですね。