フランスへの憧れが生み出した自分にしかできないものづくり
CANALIZE meets Eri Ristori|ADER.bijouxデザイナー・株式会社atelier W 代表取締役 英里・リストリ

2020.07.22

—そして、フランスに。何かきっかけがあったのですか?

以前にパリに旅行をしたとき、すっかりその魅力に取りつかれてしまい、フランスに住みたいなと思っていたんです。フランスと日本とを行き来できる生活が理想だと考えて、まずフランス人と結婚しないと、と思いつつ(笑)。もともとファッションが好きで、自分でブランドをやりたいと思っていたので、“向こうで日本向けのブランドをやったら行き来できる”と考えて、計画を立てました。

まずは現地の会社で経験を積みたいと思い、ファッションの中でも、これから参入余地のあるアクセサリーに照準を合わせ、現地のブランドにいくつも応募をして、コスチュームジュエリーのブランドで雇ってもらえることになりました。

—さて、わずか半年でご自身のブランドを立ち上げられました。その時のお話を聞かせてください。

とにかく何でも経験だと思って取り組みました。フランスの会社では、ボスへの反抗心のようなものもあって、駆り立てられるようにして仕事をしていると、周りのみんなとのコミュニケーションがとれるようになって。職人とやり取りをしているうちに、あるとき“自分でできるのでは” と思ったんです。みんなも協力してくれて、働き始めて半年後に自分のブランドを立ち上げました。

 

2011年8月に、私がものづくりを担当し、それ以外を担ってくれるパートナーと二人で、はじめはゆるい感じでスタートしました。カタログや展示会などをきちんとやりだしたのは2014年の春夏商品から、その頃に株式会社を設立しました。

 

 


—初めに、手ごたえを感じたのはいつ、どんな時ですか?

始めてから間もなく新宿伊勢丹でポップアップショップを出店したときに、二人で店頭に立っていると間に合わないくらい人が押し寄せてきて。目の前でたくさんのお客様に買っていただいたときはとても嬉しく、そのことで自信がついたような気がします。ものづくりのコンセプト、また、当時はあまり市場に無かったコスチュームジュエリーを手掛ける、という二つの大きな方向性が間違っていなかった、と思えた瞬間でした。

 

—お仕事を続けていく中で、変わらないこと、あるいは、何か決めてることはありますか?

「ADER.bijoux」は、ヨーロッパの素材を使い、古いものからインスピレーションを受けたものづくりを追求しています。ブランドを初めた頃はビンテージのパーツを使った1点ものを発表していました。もともと古いものをずっと大切にしたいという思いがあって、長く愛されるものを作りたいという思いは、ブランド立ち上げ時から変わらず持ち続けています。

それから、私にしかできないこと、とにかくオリジナリティのあるものを出していくことを、徹底的に追求するようにしています。

 

—ヒントにしているものはありますか?

具体的なものづくりは、実際に材料を見たときにどんなものを作りたいかが浮かんできます。古い材料には凝っているものや珍しい加工がしてあるものが多いので、地方の蚤の市などにも出かけて、そういうものを再現したいと思っています。

 

クリエイティブな部分では夫からとても影響を受けています。フランス人の夫は作家をしていて、歴史や文化、美術などに詳しいので、話をしているととても刺激があります。それに、私のイライラを軽減してくれるので、創作活動をするうえでも、頼れる貴重な存在です。

 

映画からコレクションテーマをイメージしたり、美術館を巡ったりもしますが、フランスには細かい風景の中にたくさんのヒントがあるので、日頃から気になるものを写真に撮ってインプットしています。例えば、ガラス細工の雰囲気、取っ手の彫りやデザインなどからもインスピレーションを得られるし、いつも心地よく刺激を受けています。

 

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香水のスプレーボトルをチャームにしたロングネックレス。除菌用アルコールを入れてウイルス対策にも。

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Interview&Text:Yurina Goto
Photo:Takuya Saito

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