――ファッション業界全体についても伺えればと思いアンス。現在は服が売れない時代といわれていて、ファッション業界も大きな変革を迫られる時期に差し掛かっているように思われます。ラムダさんが考える「これからのファッション業界のありかた」は?
「おっしゃる通り、今、服が売れない時代といわれています。けど、局部的なところを見ての意見なのか、幅広く見ての意見なのかわかりませんが、売れているところは確実に売れているんです。僕らの世代と20代前半の世代で服を買うことに関して、時差がでてきているので、洋服の良さや面白さをしっかり若い世代に伝えられれば、自ずと服は売れていくと思います。だから、ブランドやメーカー側の意図やイメージと、服を買う若い世代が望むものの“間を埋める”“パイプラインになる”役割もスタイリストとしては重要だと感じますね。今、僕には20代の若いアシスタントが3人いますが、雑誌のページを作って迷った時に、一番若いアシスタントの意見を聞くようにしています。そういった感覚も取り入れていかないとパイプラインにはなれないので(笑)。なるべく柔軟に、ミーハーでいるようにしています。イベントやクラブに行ったり、夜で歩くことも本当に重要だなって思います。人間は“湿度がある”ところに集まるので、面白いですよね。アフリカとかに池とか湖があると動物は自然とそこに集まってくる。面白いモノで人間もそうなんですよね。楽しめるクラブとか、面白い洋服屋は乾燥してなくて“熱気や湿度がある”んです。だから“湿度のある”ヴィジュアル作りも重要だなって感じますね」
“コンプレックス”を“チャームポイント”に変える作業も
スタイリストの仕事のうち
――“湿度がある”ってすごく独特の表現ですね(笑)。具体的に表現すると、どういう感覚なんでしょう?
「例えば、モデルが着る洋服のヴィジュアルでもしっかり“3次元的”に作られていることが重要だと思います。タテ、ヨコ、奥行きがあって身体を入れて成立する洋服ですけど、洗って空気が入ることで体の湿度を帯びてその人のモノになる。雑誌のヴィジュアルなどでスタイリングするときも先にモデルさんに着てもらって、モデルさんの身体に着馴染むまで、シャッターを切らない様にしてもらいます。霧吹きで水をかけたり、屈伸させたり、ストレッチさせたり。馴染んできたと思ったら、撮影を始める。そういう“湿度”は自分のなかで意識しています」
――“湿度”があるところを求めて、クラブにも足を運ぶとおっしゃっていましたが、ラムダさんが若い頃と最近とではクラブシーンにも変化がありますか?
「自分たちが若い頃リアルに遊んでいた時は小さい箱がたくさんあって、色々と遊ぶ場所があったように感じますが、最近は大きな箱がメインな気がします。最近の子は個々の表現を嫌がる傾向にある気もしています。間違ってはいないけど、皆が評価するモノしかOKとならない。みんな同じような服を着て、同じような音楽を聴くのは寂しいなと思いますね」
――確かにあまり個性を重んじない傾向にある気がしますね。殊にファッションに関しては目に見えるものだから尚更感じています。
「そうですね。スタイリングの仕事をするときも、服や人には“チャームポイント”は明確にあると思うんです。けど、僕はどっちかというと“コンプレックス”が知りたい。“コンプレックス”こそ、客観的に観ると“チャームポイント”だったりするんですよ。アーティストさんにしてもモデルにしても、着飾って誤魔化して、ウソをついている部分があるんですけど、例えばレディスなら、胸の位置が低いとかなで肩とか脚が短いとかコンプレックスがあるとしたら、それを活かしたスタイリングも僕から提案して、同意してもらえると、コンプレックスをチャームポイントに変えられたなぁと思うんです。そういう楽しみを伝えてあげることも仕事の一環なのかなと考えるようになりましたね」
――ご自身でもコンプレックスを意識することはあるんですか?
「自分もコンプレックスがあって、洋服を好きになったタイプなので。身長は低いけど、どうやったらバランスが良く見えるのかとか、スタイルが良い人に比べればだいぶ研究してきたと思うので、そういった部分も活かしたいなと思います」
髙橋ラムダ/Lambda Takahashi
古着屋のバイヤーや販売員を経て、その後ヨーロッパを放浪。スタイリスト白山春久氏に師事後、独立。メンズファッション誌に広告、アーティストのスタイリングまで幅広い分野で活躍する、引く手数多の気鋭スタイリスト。日夜多くの洋服に触れ、その精力的な活動の中で培ってきた確かな審美眼は業界屈指。
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