見る側や買う側に想像する余白を与える
ヴィジュアル作りが重要
――髙橋さんがおっしゃるように、今は局地的には服が売れていますが、全体を見ると服は売れてない時代だと思います。ファッション業界における変化をスタイリストという職業の中で感じていますか?
「一概にはいえませんが、売れてないブランドやショップは“親切じゃない”んだと思うんです。売り手がニーズを知らなすぎたり……。例えば今シーズンのテーマが『●●●●』ですと謳っているけど、自分たちの目線だけでなく、買い手の目線で、そのテーマを伝えているか。だからスタイリストは、その間にいて、買い手に噛み砕いて分かりやすく伝えたり、裾野を広げてあげたりするワケです。例えば、ジャケット1枚とっても、ブランド側はレイヤードして着てほしくても、僕はジャケット一枚で成立するアウターとしてのヴィジュアルも見せてあげて、インナーにもできるという“幅”をみせてあげる。普通がわかったうえで、レイヤードの楽しさも分かると思うので。今までは不親切でもブランド力で売れていた部分もあるとおもいますけど、もう少し自分たちが作ったものに対して踏み込んだ説明をしてあげることで、買い手も納得できると思うんです」
――伝える方法として、スチールのほかにムービーにも興味があったりしますか?
「実際、ムービーも興味がありますけど、自分的にはスチールもムービーも一緒で一切、説明を入れたくないです。例えば、映画のティザー編のような感じ。ドキュメンタリータッチの撮り下ろしなど起承転結がある物語ではなく、なるべく所作で面白く見せたり、何をやっているブランドなのか、ショップなのか、見る側に想像する余白を与えてあげるページ作りやヴィジュアル作りをしていきたいんです」
――実際、ファッションとムービーって相性が悪いような気がしています。
「それは感じます。スチールのヴィジュアルだと非日常的な“イメージ”を見せることで、グッと見ている側の心をつかむことができますけど、ムービーはその端々が見えてきてしまうので、難しいですね」
――とはいえ、これからは肩書きに縛られないで、色々なことを考えなければいけない時代ですね。
「そうですね。スタイリストは服を集めて、モデルに着せて、ヴィジュアルを作るというイメージでしたけど、今はもうワンステップ先に進んでいますね。ルックブック1つでも最初のコンセプト作りやディレクションから携わるとか。例えば、レディスブランドのファーストシーズンのヴィジュアルを作ってくださいとオーダーされて、自分がイメージを作っちゃって責任とれるかな……って考えたりします。色々と考える機会も多くなりましたね」
――今後はどういった動きをしていく予定ですか?
「今、ちょうど色々と動き始めているところです。基本は“つくる”ところがベースですが、友達と小物のブランドを作ろうとしていたり、ブランドのカプセルコレクションを任されたり……今はようやくそれぞれが同じベクトルでできるようになってきました。ヴィジュアルづくりもモノづくりも同じテンションで携われているのが楽しいし、これは続けていきたいところでもあります。話はいくつか来ていたんですが、タイミングが合わなくてお断りさせていただいたので、今後はコレクションなどランウェイショーにも携わっていきたいですね。ムービーと一緒でショーも360°見られるものだから、色々と新しい見せ方が出てくるような気がします。今までは仕事でいっぱいいっぱいになっていましたが、最近は少し余裕が出てきたので、自分なりにファッション業界を盛り上げていきたいと思っています」
髙橋ラムダ/Lambda Takahashi
古着屋のバイヤーや販売員を経て、その後ヨーロッパを放浪。スタイリスト白山春久氏に師事後、独立。メンズファッション誌に広告、アーティストのスタイリングまで幅広い分野で活躍する、引く手数多の気鋭スタイリスト。日夜多くの洋服に触れ、その精力的な活動の中で培ってきた確かな審美眼は業界屈指。
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