これからの時代において、本当に満足できる洋服とは?
CANALIZE meets TAISHI NOBUKUNI
――今日はテーラーという職業について、また、これからのファッションシーンについてお話をうかがいたいと思っています。
「ファッションという大きな船があるとすると、僕はそこからいち早く逃げ出して、いまは必死に小さなボートを漕ぎながら、その大きな船が沈んでいくのを眺めている感じです。30代後半くらいから、トレンドどうこうよりも、デザイナーという職業とファッション業界に漠然とした不安を覚えるようになりました。当時はまだそれが何から来るものかわからなかったのですが、近づいてくる危機を肌で感じていたのかなと」
――10年以上前から危機感があったわけですね。
「ありましたね。先の動きを察知する能力には長けているようで。そうして、消費者としての感覚も自然と変わりました。毎シーズン、新しいものが本当に必要なのかとか。もちろんデザイナーとしての矜持もあり、シーズンごとに違うものを提案し続けてはいましたが、着る側としてはそこに違和感があり、だんだんと自分の気持ちが乖離していきました」
――違和感とは具体的にどのようなものだったのでしょうか。
「30代の半ばから志向がベジタニアリズムなどに移りまして、いち早くヨガを始めたりする中で何が変わったかというと、幸福の定義がより内面的なものになり、服を着て満たされる感覚が以前とは違うものになっていきました。より個人的なもの、人からどう見られるかより、内面の充実へ向かっていくというか。そして、決定的だったのは3.11でした。あれから同じような思いを持つようになった人も多いのではないでしょうか」
――その後、信國さんはテーラーへの道を歩みます。
「着る人間の嗜好として、よりパーソナルなものであり、また、ファッション産業におけるこれまでの生産システムに限界を感じていたということもあります。オーダーは単純にパーソナライズされてサイズが合うだけでなく、その仕組みを厳密にすると、同じ価格の既製品よりも価値の高い生地を使うことができます。ものがいいので、それに慣れると戻れません」
――それは着る側と作る側のどちらでしょうか。
「どちらもです。自分としてもデザイナーの服を買うより、自ら生地を仕入れて作ったほうが価値のあるものを着られますから」
信國大志/テーラー
1970年生まれ。セレクトショップの設立に参加し、バイヤーとしてキャリアをスタートする。イギリスのセントラル・セント・マーチンズ美術学校修士課程修了後、自身のブランドとなるTAISHI NOBUKUNIを設立。また、その傍らでTAKEO KIKUCHIのクリエイティブディレクターも務める。2011年にデザイナーからテーラーへと転身し、サロンをオープン。以降、ビスポークテーラーとして活動する。趣味はサーフィン。
http://www.taishi-nobukuni.co.jp/
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