これからの時代において、本当に満足できる洋服とは?
CANALIZE meets TAISHI NOBUKUNI
――テーラーとして、社会をよくするより、ひとりの人を幸せにしたいというお話もありました。
「ようやく最近、自分の服を着て感動してもらえるようになってきました。アイロンを使ってパンツを曲げることで、脚に合わせていく作業があるのですが、実際に穿いてもらうと驚かれます。ふくらはぎなどで引っかかることがなく、まるで脚についてくるような穿き心地になるんです。そうした喜びはビスポークテーラリングならではのものだと思います」
――アイロンでパンツを曲げられるとは驚きです。
「アイロンは仕上げにかけるものとイメージされがちですが、それだけではありません。動かしながらかけるだけでなく、場所によっては7分くらい放置したりすることで生地を曲げていけるのです。ふくらはぎを膨らます際も、そういうやり方をします。素材にもよりますが、そこまで熱と時間をかけたものは元に戻りません。実は、テーラーでも知らない人がいたりするのですが」
――それでは最初に戻って、少し先の話も伺わせてください。今後のファッションシーンについて、何か思うことはありますか。
「僕の嗜好とは関係ありませんが、何年か前から思っているのは、“オヤジ・ストリート”というものが世の中的にもっと来るだろうということですね。それはなぜかというと、まずは日本のオヤジたちのカジュアル化がひとつ。また、ジバンシイをはじめとする、ストリートテイストの海外のラグジュアリーブランドを日本に落とし込むときに肝となるのが、オヤジだということがひとつ。ストリートスタイルを通過してきているオヤジがそういった服を着ることは、より一般的になるんじゃないでしょうか。あくまで、僕の嗜好とは関係ありませんが(笑)」
――そこをすごく強調されますね(笑)。
「スーツに関していうと、 “サラバ、イタリア。サラバ、ナポリ”という時代が来てほしいと思っています。自分は英国的なものが何より好きなので。毎年来ると言われながら英国的なものがなかなか来ないのは、古いイメージを持たれているからでしょうね。いわゆる“伝統的”みたいな。でも、実際はそうした伝統をイノベートしている人たちも多くいて、そういったものを伝えられたら変わると思うんです。テーラーの世界もそうですし」
――これからの時代、どんなものが失われ、どんなものが生まれていくのでしょうか。
「僕らテーラーはそんなに変わらないでしょうね。たとえいろいろなものが自動化しても。少し前に洋服の生産を全自動化するという話がありましたが、この世界については変えようがないと思います」
信國大志/テーラー
1970年生まれ。セレクトショップの設立に参加し、バイヤーとしてキャリアをスタートする。イギリスのセントラル・セント・マーチンズ美術学校修士課程修了後、自身のブランドとなるTAISHI NOBUKUNIを設立。また、その傍らでTAKEO KIKUCHIのクリエイティブディレクターも務める。2011年にデザイナーからテーラーへと転身し、サロンをオープン。以降、ビスポークテーラーとして活動する。趣味はサーフィン。
http://www.taishi-nobukuni.co.jp/
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