これからの時代において、本当に満足できる洋服とは?
CANALIZE meets TAISHI NOBUKUNI
――時代に求められて復活しているものも多くあり、テーラリングもまたそのひとつであると。
「そうだとは思いますけど、まあ、実際のところはわかりません(笑)。戦後はテーラーが2万軒くらいあり、そこから大量生産に変わったのも最近といえば最近ですしね。ちなみに、イギリスでビスポークテーラリングと呼ばれるためには明確な基準がありまして、制作に80時間かかっていないものはそう呼べないんです。ボタンホールひとつ手でかがると約20分、3つで1時間、両袖で2時間、前身で3時間、芯を作るのに1日かかり……そうやって考えるとどれだけの時間がかかるかわかってもらえると思います。だから、コストを考えれば、やはりどこかに奉仕の精神がないとやっていけませんね。いまの一般的な服に慣れている人からすると、なんでそんなに高いのかと思われるかもしれないけど、世界基準から見れば30万円くらいは安いほうです。イタリアのあるレベルのテーラーだと値段は100万、納期は1年後ですし」
――1年後となると、オーダーした人は太れませんね。
「それはすごくいい質問です(笑)。実はテーラーの服って縫い代を各所に3cmくらい残しているから、全周で12cmくらいは調整することができるんですよ。そういう服はテーラーならではなので、体型の変化が心配な人も、気にせず作りにきてほしいですね」
――そういうことなら、サイズの面に関しては安心してオーダーができそうです(笑)。
「採寸で苦労しているのも、自分なりのやり方を考え続けているのも、ポイントとなるのはお腹のサイズです。僕も痩せているように見られますが、横から見ると胸よりもお腹のほうが前に出ているんです。数値では表れないお腹の出方もありますし、男性は歳を取るとお腹が出てくるので、服も着物と同様にお腹を基準にしたほうがいいと考えています。みんなステレオタイプに、胸を基準にするのがいいと思っているようですが」
――お話をうかがっていると、ファッションという船が沈みいく現代において、テーラーやオーダーに目が向くのは自然なことのように思えてきました。
「洋服を愛する人は、もうオーダーで服を作るしか道はありませんよ(笑)。まあ、それは冗談としても、一度味わうと戻れなくなるのは確かです。地味な部分はなかなか伝わりにくいので、僕はもう少しわかりやすくカッコいいものを作ることで、興味を持つ人を増やしたいと思っています。ビジネスの場で着る人が多く、スーツのデザインには制約がつきものではありますが、許される限り、自分自身でもヤバいと思えるようなものを作っていこうと。そこについては、遠慮しないでやっていくつもりです」
Fin.
信國大志/テーラー
1970年生まれ。セレクトショップの設立に参加し、バイヤーとしてキャリアをスタートする。イギリスのセントラル・セント・マーチンズ美術学校修士課程修了後、自身のブランドとなるTAISHI NOBUKUNIを設立。また、その傍らでTAKEO KIKUCHIのクリエイティブディレクターも務める。2011年にデザイナーからテーラーへと転身し、サロンをオープン。以降、ビスポークテーラーとして活動する。趣味はサーフィン。
http://www.taishi-nobukuni.co.jp/
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