出会いへの感謝と喜び、なりたい自分を追求するなかで
CANALIZE meets Masako Nakagawa|写真家 中川正子

2019.07.01

 

—小さい頃はどのようなお子さんだったのですか?

小学校2年生までは、おそらく親が心配するくらい自分の殻に一人で入っているような子供でした。人と話さず一人の世界にいることが多く、お世辞にも社交的には見えなかったと思います。運動神経は良かったので、活発といえば活発でしたが、人と積極的にかかわるような性格では無かったですね。

小学2年生の時に、担任の先生から学級委員に指名されて、やらなくちゃ とやってみたところ、思った以上にうまくできて、そこから人と関わるスキルを獲得したような気がします。その後、大学3年生の時にアメリカに留学して、より積極的にコミュニケーションをとらないといけない環境の中で、自分の意見をまっすぐ伝えるという技術を得ました。

もともとは物語の中に没頭したりするのが好きで、賑やかなところよりは1対1くらいでじっくり話す方が好きな性格でしたので、今、毎日違う人と会うような仕事に就いていることは驚きでもあり、自然な流れでもありました。

両親からは、勉強のことはほとんど言われず、それより運動しなさいと言われていました。小学校ではバスケットボール、中学では陸上、その後、体を壊してしまって高校では程ほどにバレーボールをやっていましたが、大学ではうずうずしてフィールドホッケー部に入部。ミニスカートとポロシャツがかわいいと思って始めたのですが、始めてみるととてもハードでびっくりして。でもこれが私の求めていたものだと思いました。やっぱり運動が好きなので、しっかり体育会系で活動したいと思ったんですね。

 

—留学はどのような目的で?

大学在学中に、千葉県船橋市の交換留学生として、1年間カリフォルニアに留学させていただきました。

何をやりたいでなく、ただアメリカに行きたかった。世代的にアメリカが輝いていた時代で、中学の頃などはハードロックが好きで、<ボン・ジョヴィ>や、<ガンズ&ローゼス>を聴き、テレビドラマの<ビバリーヒルズ青春白書>を観て、“かっこいい”と、とにかくアメリカで頭がいっぱいで、どんな形でも良いのでアメリカに行きたいと思いました。

留学先で、たまたま何となくフォトグラフィーをやってみたら思いのほか面白い というのが写真との出会いでした。自然に写真と出会い、専門的にやっていきたいと思いました。

 

—何か特別な体験がありましたか?

私は、それほど勉強しなくてもそこそこ、あくまでもそこそこなのですが、そんなふうにできてしまうタイプで、激しく熱中したものがそれまで一つもなかったのですが、写真に関しては凄くはまってしまいました。言われもしないのに毎日何時間も暗室に籠ったり、毎週遅くまでプレゼンの準備をしたり。何かを必死にしたのが人生で初めてだったので 楽しくて楽しくて。帰国したら就職活動というタイミングだったので、“じゃこれ仕事にしよう” と決めて帰ってきました。今思えば、なぜそんなに自信満々だったんだろう? 何のコネクションもないのに“もう決めた!”という感じでした。

留学に行く前には津田塾大学に通っていました。周りには意識が非常に高い同級生が多く、一年生の段階からどういう職業につくかイメージを持っている人が多かったのですが、私にはそんな意識が一切なくて。それで、当時から戸田奈津子さんが津田塾出身のスターだったので、暫定的に私は字幕翻訳家にしようかな と思って、「戸田さんみたいになります」と言っていました。字幕翻訳家になるとスピーチして交換留学に行ったのに、一年後にはあっさり違うことを目指して帰ってきました(笑)。

 

—写真家へのスタートを切ったのですね。まず何から始めたのでしょう?

帰国時は大学3年生でした。親には散々迷惑をかけているので、少しでも自分でお金を稼がないと と思い、学業と並行して居酒屋などのアルバイトを掛け持ちしていました。そこで雇ってくださっている方などに 「私、今はこの仕事をしているけど、本当はフォトグラファーになりたいんですよ」と、会う人会う人ごとに話していました。そうすれば職業に繋がると思っていた訳ではないのですが、言いたくて仕方がなくて。興奮気味に言っていたら、ある現場にいた広告代理店の方が<モノマガジン>という雑誌を紹介してくださり、そこで更に「もっとあなたに合う場所があるよ」と言って、後に師匠となる事務所の社長を紹介してくださったのがご縁で、アルバイトとして雇っていただくことになりました。

その後、大学4年生になっても毎日バイトを続けていると、師匠が心配して「就職活動はいいの?」と聞いてくださって、その時に、「私、もうここに就職します」と。「最初のうちはお給料もそんなに出せないけどいいの?」と心配してくださったのですが、「いいです」って。

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作品提供:中川正子
Text:Yurina Goto
Interview Photo:CANALIZE editorial team

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