出会いへの感謝と喜び、なりたい自分を追求するなかで
CANALIZE meets Masako Nakagawa|写真家 中川正子

2019.07.01

—ご家族のサポートも大きいですね。

本当に感謝しかないです。

夫は岡山の大学で教鞭をとりつつ、全国各地でプロジェクトを持つ建築家として活動しいます。彼もとても忙しいけれど、私が出張の時は 食事をつくり、息子の宿題を見て、ランドセルのチェックもして。私のやりたいことを制限せずにサポートして応援してくれるのは本当にありがたいです。私という存在をそのまま受け入れてくれて、私の仕事の方向性にもさりげなく的確なアドバイスをしてくれるし、プライベートな相談ごとも、彼の考えを押し付けるのではなく、私が自然と自分の答えにたどり着けるように適切な質問をしてくれるような人です。大切なパートナーでもありますが、同時に名コーチのような存在でもあります。私に対する愛情や優しさ以外にも、俯瞰した冷静な目線で地図を見ていて、ここで私のやりたいことを堰き止めてしまうと、このような<災害>が起こるとか、ここはすっと通ったほうが、今は大変だけど結果は・・・というような、大きな目線でのジャッジをしてくれている気がします。

それから、豊橋(愛知県)に住んでいる義理の両親には、息子をどうしても預かってもらわないといけない時には、名古屋駅の新幹線のホームまで迎えに来てもらって、停車中のドアが開いたときに預けたりしていました。岡山に新幹線でヘルプにかけつけてもらうことも何度もありましたが、そんな嫁に、「ありがとう、お母さん楽しみが広がった」と言ってくれて。もちろん私の実家の両親にも、保育園時代の送り迎えから何から、手厚くサポートしてもらいました。師匠にも後輩たちにも、友人、仲間たちにも、感謝してもしきれない。本当に自分の実力ではなく、みんなのサポートのおかげでここまでやってくることができました。

 

—制約を抱えたことで、解決しようとする力がついた?

そうですね。その頃、ちょうどおしゃれなママ雑誌が創刊し始めていて、編集者もスタッフもお子さんがいるようなことが多くて、そんな場合は、みんなで子供も連れていっていいことにしよう、とか。同じ立場で前向きにやりくりしている彼女たちから学ぶことも多く、ありがたかったです。

かつては仕事というものはビシッとしないといけないと決めつけた部分があったのですが、そのママ達と仕事をするのもすごく大きいことで、“いいものをつくればやり方は関係ないんじゃないかな” と思うような経験になりました。<何とかする力>が抜群につきました。

 

—家庭での様子について少しお聞かせいただけますか。

夫とはもちろんですが、息子ともとにかくたくさん話すようにしています。息子は2つの保育園に通い、船橋や豊橋の両親の実家に預かってもらうことも多く、少し特殊な環境で育てていることもあって、小さいころから全部それらを説明し、納得いかないことは全て尋ねる様にと育ててきました。話す時には肯定的なイメージを持って、それが伝わる言葉を使うようにいつも気をつけています。自分という存在はありのままでいいんだ、と彼が感じられるように。あと、人生というのは楽しく素晴らしい、というイメージも持ってもらえたらと思っています。他に基本的なことですと、「ありがとう」も「ごめんなさい」も「だいすき」も「出会ってくれてありがとう」、も。夫にも息子にも、喜びや感謝の気持ちはちゃんと伝えるようにしています。

 

写真家、中川正子の新しいスタート

—岡山を拠点にして転機が訪れたのですね。

子供を産んで仕事をスローダウンする中で、東京の拠点を離れて岡山に来て、周囲から「さすがに無理だよ、キャリア終わるよ」と心配されたりして、しばらくしょんぼりしていたのですが、急に“これは転機に違いない” “ここで写真家 中川正子 の新しいチャプターを始めよう”と思った瞬間がありました。

それまで忙しすぎて、早朝出かけて夜中に帰ってきて、週末しか洗濯しないような生活だったのに、岡山ではゆったりする時間が初めて持てて、朝洗濯したら昼間乾いてるという当たり前のことをするようになりました。その洗濯物を干すときにベランダから見える里山を見て、関東平野弊社育ちの私は、毎日こんな至近距離に山が見えるってすごいな と感動していました。そんなある朝、急に、“今が写真集出す時だ” ってわかってしまったんです。朝8時でした。

_J3A3255Photo 中川正子:ベランダから見える里山

 

私は商業写真としては成功のようなものを得ていたと思うけれど、ずっと個人名で写真集を出すような人にどこか引け目のようなものを感じているのを自分でわかっていて。自分がやりたいことのひとつがそれだ、ってずっとわかっていたけれど、見て見ぬふりをしていたんだと思います。お金もかかるし時間もないし、出版社に認めてもらわなければできないし、“私はまだ違うんだろうな。”と。でもその時に、“いや、もう出そう。やり方はよくわからないけど出そう” と決めて、決めたらそれはそれはとても清々しい気持ちで。

もともと知り合いだったデザイナーが出版レーベルを立ち上げたと聞いていたので、朝から電話して、「私、写真集出したいの。貯金もこれくらいあるけど、どう思う?」って訊いたら、「全然出せるから一緒にやる?」って言ってくれて、「やるやる」と。それから驚くほどスムーズに事は進み、2013年に写真集を出版しました。

 

—自費出版だったのですか?

はい。東京で仕事をしていた時に貯めていたお金があり、何かあった時に使おうと思っていたんです。出産をして、震災を経験して岡山への移住もして、本当に色々な事があったけれど、もうこれ以上何かなさそうだし、“このお金使っちゃおう”って。そのお金は仕事がハード過ぎる頃に貯めたもので、何かネガティブな感情に満ちているような気がしていたので、使った時にはすごく爽快に感じました。

 

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作品提供:中川正子
Text:Yurina Goto
Interview Photo:CANALIZE editorial team

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