2016.03.18
CANALIZE meets Shuya Okino INTERVIEW
玉石混合の今だからこそ、
プロとしての真価が問われる時代に
CANALIZE meets Shuya Okino
沖野修也/Shuya Okino
1967年生まれ、DJ、クリエイティブ・ディレクター。実弟である沖野好洋とのDJユニット、KYOTO JAZZ MASSIVEとして全世界でリリース、プレイをする傍ら、渋谷の伝説的クラブTHE ROOMのオーナーも務める。MONDO GROSSO、MONDAY満ちる、SLEEP WALKER、吉澤はじめなど、数々のアーティストを世に送り出し、プロデューサーとしての手腕も発揮。選曲家として、企業のプロモーション等にも携わる。最近では期間限定の書店『JAZZY BOOKS』やMONDO GROSSOのスペシャルライブのプロデュースを行うなど、精力的に活動を続ける。
撮影場所:THE ROOM
情報の氾濫によってもたらされた
今の音楽シーンについて考える
――音楽業界、クラブ業界も大きな転換期にきていると思いますが、今はどのような状況におかれている印象ですか?
「クラブについていうと、かつてのクラブっていうのは、テレビのヒットチャートとか海外のポップチャートには引っかからない音楽を探したり、DJが紹介したりすることに興味を持った人が集まってくる場所だったんですけど、今はもう有名なDJじゃないとお客さんは入らないし、集まる人の志向が音楽の環境よりも盛り上がるかどうかに向いてる感じですね。音楽というよりパーティを楽しむっていう。EDMがアメリカでヒットして話題になっていると聞いたら、“EDMが本当に好きかどうか”“自分に響くかどうか”ってことより、“EDMが盛り上がってるからそれを聴きにいく”みたいな。本来、世の中で騒がれてるところとは違う場所で音楽を探求する人が集まっていたはずなんですけど、奇しくも風営法の改正とほぼタイミングを同じくして、その意味合いが完全に変わってしまったというのが僕の率直な感想です。それが悪いってことではなくて、現状の分析としてね」
――音楽業界としてはいかがでしょうか?
「音楽は多様性が生まれた分、細分化されすぎてそれぞれのパイが小さくなったから、そこに属する人は大変かな。以前は“クラブ”っていう大きな括りの中に、ヒップホップもハウスもテクノもジャズもレゲエもあったんだけど、それぞれが独立して成立するようになった分、やっぱりパイの数が増えてそれぞれのパイが小さくなったっていう現状は否めないと思います。音楽のバリエーションは、いい言い方をすれば豊かになったんじゃないかな」
――情報過多で、いいアーティストが埋もれてしまうというか、ユーザーがピックアップしづらい時代でもあると思うのですが。
「そうなんです。だから、ユーザーの有名人志向とか話題志向は、ある種仕方のない側面もあるんですよ。結局、情報が氾濫しているからこそ、権威や認知度がある人のレコメンデーションに頼らないとユーザーが探せないっていう現状もあると思います。でも、AmazonでもiTunesでも、おすすめ機能っていうのがあるじゃないですか。あれの是非はともかくとして、やっぱりカスタマイズされていくと思うんです。かつては、数少ないメディアが紹介することで、ムーブメントとかブームみたいなものが生まれてきたけど、これからは権威志向とか有名人志向がある一方で、一部の感度のいい人は、カスタマイズっていうか、自分だけにしかないセレクションとか自分だけのディスカバリーみたいな方向に動いていくと思います。まあ、二極化してるかな。僕としてはその比率を変えていきたいんですけどね」
――一方で、たとえば数自体が増えているのでなんとも言えませんが、フェス人口は増えてますよね。
「フェスもちょっと数が多すぎるかな。これも結局は淘汰されていくと思うんですよ。ブランディングできてるところ、アクセスがいいところ、もしくはアクセスが悪くても行く価値があるところが残る。かつてクラブが栄えたように、ここ10年くらいはフェスフェスって言われてますよね。自分でもここ10年くらいフェスをやってきて、その間はすごい苦労も充実感もあったけど、去年はあえてやらなかったんですよ。だってもういっぱいあるし、だったらリスクを背負うより見に行ったほうがいいかなって。でもやっぱり自分のフェスにしかない独自のスキームみたいなものもあるから、結局人がつくったものを見ても、僕としては物足りないんですよね。たくさんフェスに行っている人ならハードルもあがるだろうし、乱立してようが最終的にはふるいにかけると思うんです。だから今後はブッキングとか、フェスをオーガナイズする人の思想やポリシーみたいなものが問われるフェーズに入っていくと思いますね」